生活保護ってどんな制度ですか?

<生活保護制度とは>

 人は誰でも、病気や失業、生計中心者との別離等により、自分の力では生活ができなくなることがあります。そんなときに、権利として生活を保障してくれる制度、それが生活保護です。

<生活保護を申請できる人は?>

 生活に困っている人なら誰でも生活保護を申請できます。
 福祉事務所は、「家がない人はダメ」とか「別れた夫と扶養の話し合いを先にしなさい」などと、「相談」だけで生活保護の申請をさせずに市民を追い返すことがありますが、法的には全く誤ったやり方です。「却下になってもいいからとにかく申請をさせて欲しい」と堂々と主張すれば必ず突破できます。
 なお、国は、1990年以降、外国人の保護適用について「定住外国人のみ」と不当にも限定してしまいました。国際人権規約等に照らしても全く不当であると私たちは考えています。

<生活保護ではどんな生活が保障されるの?>

 生活保護法は、憲法25条を受けて、「この法律で保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定しています。
 「健康で文化的な生活水準」は国民の生活レベルの向上とともに常に発展していますが、全面的にはこれを認めようとしない国と市民との間で、「朝日訴訟」以来今日の「生活保護基準引下違憲訴訟」に至るまで、闘いの中で前進してきた歴史を持っています。
 具体的には、「33才男、29才女、4才女」の3人世帯で約16万円(京都市の場合・・地域ごとに6段階の格差があります)というような水準で、細かい計算が必要ですが大まかに言えば、これより収入が少なければ保護が適用されることになります。
 保護の種類としては、生活扶助・住宅扶助・教育扶助・介護扶助・医療扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類です。

<生活保護には厳しい義務がつきまとうと聞くが・・>

 現在国は、「適正化」と呼ばれる生活保護切り捨て政策をとり続けており、法律の規定をはるかに超えて、制度利用者に負担を押しつけている実態があります。
 しかしながら、生活保護制度を利用するときの権利と義務は法律に明確に規定されており、これを超える義務の押しつけは当然違法です。
 法律に定められた義務とは、大まかに言えば、「働ける能力があればできるだけ働く」「親や子などから援助が受けられるのであれば受けるようにする」などの「自分でできる範囲は頑張るように」という(これを「補足性の原理」といいます)ことが中心です。派生的に、最低生活費を決めるために必要な収入の届け出義務なども定められています。また、福祉事務所が法律に定められた要件に基づき、「指導」又は「指示」を行ったときにこれに従う義務も定められています。
 一方的な義務の強要は誤りであり、私たち生活保護裁判連絡会の交渉によってすぐに是正されているものも多くあります。「おかしい」と感じたら泣き寝入りせず、相談コーナーからメールをお寄せください。

<生活保護があるのにどうして餓死事件などがなくならないのか?>

 最低生活以下の生活を余儀なくされている人が膨大に放置されている国、残念ながらこれが今の日本の実態です。この背景には、お金がかかる福祉については、できるだけ小さくしようという今の政治の流れがあります。生活保護については「適正化」という名の下に、市民の権利を侵害する運用がなされてきました。必要な人が生活保護を受けている割合は、欧州諸国と比べるとはるかに低く、それだけ市民にとって生活保護が縁遠い存在とされてしまっています。
 私たちは、ひとつひとつの権利侵害を救済するとともに、誰もが最低生活を保障される、という憲法上当たり前の社会が実現できるよう、頑張っているのです。