生活保護とは?

(以下の文献を最新状況を加味して改変)

Ⅰ、Ⅱ 金澤誠一編著『公的扶助論』「生活保護裁判の歴史と争点」271頁~276頁
Ⅲ 日本弁護士連合会編『検証 日本の貧困と格差拡大』149頁~164頁

 生活保護をめぐる裁判は、かつては、非常にまれであったが、最近では、深刻な生活保護制度の運用とその反面での市民の権利意識の向上、さらに裁判を担う弁護士が少しずつではあるが増えてきたこと、また、訴訟を支援する当事者団体や市民団体の成長などの結果、全国各地で提起されるようになり、生活保護裁判「第三の波」(小川政亮日本社会事業大学名誉教授の発言)と言われた時代を超えて、現在では、「第四の波」と言われる時代に入ったといえる。

 しかも、生活保護裁判は、行政訴訟では珍しいと言われるほど原告の勝訴の確率が高いのが特徴である。また、仮に裁判では敗訴になったとしても、裁判が提起されたこと自体によって、後に国が制度の運用を改めるように通知を出すなど、より良い生活保護行政を作り出すために、裁判は大きな役割を果たしている。

Ⅰ 生活保護裁判の特徴

 現行生活保護法が昭和25年5月4日に制定されて65年(2015年現在))が経過した。この間の生活保護裁判(一部の社会保障裁判も含む)は、大きく3~4期の高揚期に分けられる。

 その特徴は、一つには、いずれの時期も、生活保護の「適正化」(という名の抑制)政策が強化された時期に、その抵抗として裁判が起こっていることである。

 二つには、現行法施行から現在まで、裁判で問われているテーマが進化、発展していることである。生きることそのものが問われた第1期の朝日訴訟、平等ということが強く意識された第2期の堀木訴訟、人間の尊厳や自己実現、自己決定が問われている現在まで続く第3期など、そのテーマは福祉思想の発展にも影響され深まりを見せている。

 三つには、2005年度からの老齢加算減額廃止を争う生存権裁判や、2013年8月からの基準生活費の減額を争う裁判など、数百人に上る原告による集団訴訟が起こされていることである。これは、生活保護が権利であることが市民の間に定着してきたことを示すものである。

 日本においては要保護者が裁判を起こすことは様々な困難を伴う。提訴した場合の裁判費用の工面や生活費の確保はいうに及ばず、原告に傷病者が多いことから、精神的、肉体的な負担、さらに親類や世間などからの有形無形の「圧力」などの問題がある。これらに耐え、乗り越えなければ裁判はできない。
 しかし、朝日訴訟以来の生活保護裁判の半世紀余りの歴史を振り返ると、こうした困難を克服し、生存権を守り発展させることが当然の人権として日本社会に確実に定着してきていることを強く感じざるを得ない。

 そこで、生活保護をめぐる主な裁判の歴史、内容を紹介し、あわせて、その裁判から浮かび上がった制度の問題点と改善の方向について分析してみる。

Ⅱ 生活保護裁判の歴史

(1) 第一の波(1960年代前半) ~人間裁判・朝日訴訟の時代

 1954~56年は第1次保護「適正化」期である。防衛費増強のための社会保障費の大幅削減が問題となり、結核療養患者と在日朝鮮人が削減のターゲットとなった。これに抗して裁判を起こしたのが岡山県津山市で重症結核患者として療養生活を送っていた朝日茂さんであった。

 1957年に起こされた朝日訴訟は、日用品代月額600円の低位性を問うと同時に、福祉事務所が35年間も音信不通であった兄を探し出し扶養援助を求めるという前時代的な行政運用を問うものであった。東京地裁1960年10月19日判決は、朝日さんの全面勝訴という結果となり、判決では健康で文化的な最低生活について、単なる生物的な生存ではなく「人間に値する生存」が保障されるべきとして、日用品代600円という保護基準を違法と断じた。しかし、1963月11月4日東京高裁では逆転敗訴、その後朝日さんが亡くなり善子縁組によって健二さんが訴訟承継を進めたが、1967年5月24日の最高裁は訴訟承継を認めず、最終的には敗訴が確定し裁判は終結した。

 しかし、この朝日訴訟は生存権という憲法で認められた新しい権利を国民に定着させる上ではかりしれない意義があった。朝日訴訟は「人間裁判」と呼ばれ、当時のあまりに劣悪な保護基準をクローズアップさせた。また、保護基準が単に保護利用者だけの問題ではなく、最低賃金など労働者や国民全体の問題であることを世に知らしめ、訴訟支援活動は労働組合をはじめ全国民的な運動として発展した。朝日訴訟の提起とその後の運動は、日用品費をはじめ保護基準の大幅な改善をもたらした。

(2) 第二の波(1960年代後半~70年代初頭) ~弾圧に抗して。平等を求めて

 この時期も先行する1964~66年の第2次保護「適正化」期における保護抑制政策が大きな背景となっている。この時期は朝日訴訟などの影響で保護基準が改善される一方で、いわゆる炭鉱離職者の保護利用が激増したため、稼働年齢層を保護から排除する政策がとられた。ターゲットが稼働年齢層であるだけに警察などと連携した強権的な手法がとられ、収入の過少申告などを「不正受給」として詐欺罪などで取り締まる刑事弾圧事件が多発した。これらの抑圧に対して、生活と健康を守る会などの当事者団体はねばり強い取り組みを行い、同会の行政との団体交渉権を認める判決が出されるなど注目される成果を得ている(鳥取地裁昭和47年8月29日判決〔米子生健会事件〕)。

 この期の後半では、妻と、夫および夫と同棲中の女性とを同一世帯と認定するという時代錯誤的、公序良俗に反する世帯認定によって、別居して入院中の妻・藤本イキさんの保護申請を却下した処分の取り消しを求めた第1次藤木訴訟が起きる。東京地裁昭和47年12月25日判決は藤本さんの請求を認め、福祉事務所の保護申請却下処分を取り消した(確定)。

 なお、この時期には、生活保護を直接のテーマとしたものではないが児童扶養手当と障害福祉年金の併給制限規定の違法性を争った堀本訴訟が提起され、神戸地裁昭和47年9月20日判決では全面勝訴を得ている。

(3) 第三の波(1990年代~2000年代中盤)~多くの市民の立ち上がりと高い勝訴率。福祉思想の深化・発展

 この時期も、1981年からの第3次「適正化」期が先行する。第3次「適正化」期は、「自立自助」を強制し、戦後の福祉国家体制を弱体化させる、いわゆる臨調・行革路線を背景に、社会保障財政の抑制政策が進められた。暴力団等の不正受給を口実にした1981年のいわゆる123号通知による保護の入口で申請を阻止する「水際作戦」がその始まりであった。この時期の生活保護政策は保護の申請抑制、厳格・詳細な歯止めなき調査、稼働年齢層・ホームレスなどを生活保護から類型的に排除する運用などを特徴としている。このような運用は1987年札幌母親餓死事件、荒川区老女自殺事件など悲惨な事件を引き起こした。

 しかし、他方でこの時期は介護福祉や障害者福祉などの福祉問題の普遍化、定着化の時期でもあった。また、現生活保護法施行後40年を超え、生活保護の権利が国民の間に根づいてきた時期でもあった。

 この期の特徴は、第1に、多くの市民の立ち上がりと勝訴率の高さである。裁判は第2期までとは比較にならないぐらい多数提訴され、少なくとも半数以上が勝訴している。提訴の多さは、「適正化」による締付けや入格侵害がいかに深刻かということを示している反面、前述のように福祉思想の広がりと権利意識の定着を反映しているものである。

 第2の特徴は、裁判の争点が進化、発展していることである。高訴訟では、在宅で暮らしたい、車いすではなく布団の上で寝たいという人間の尊厳、自己決定が問われた。中嶋訴訟では、支給された保護費の使途は自由であるというこれもまた自己決定、自己実現が争点となった。これらは、近時の福祉思想の発展に照応して、生活保護裁判でのテーマも発展していることが見て取れる。

 第3の特徴は、裁判の争点が生活保護制度の全体に及び多面化していることである。保護の申請、補足性(稼働能力、自動車、学資保険、預貯金など)、保護基準、必要即応(特別基準など)、各扶助(住宅扶助等)、方法(施設入所等)、保護の廃止(保護辞退、廃止手続き等)、費用返還(63条)など生活保護のあらゆる分野、領域に及んでいる。

(4) 第四の波(2005年~現在)  ~貧困の拡大と集団訴訟

 現代は、第3の波がなお持続しながらも、さらに第4の波が重なっている時期といえる。
 21世紀に入り、格差と貧困の拡大が顕著になり、市民生活の地盤沈下が明らかになってきた。1995年を底にして生活保護利用者は増加していたが、2008年秋のリーマンショックを経て、2011年には生活保護利用者数が制度発足後最多となった。既述のように、2003年から保護基準の引下げが始まっていたが、2012年に起きた生活保護に対する猛烈なバッシングを契機にして、国は2013年8月から制度発足後最大規模の生活扶助基準の引下げを実施するに至った。すでに2004年度からの老齢加算の減額、廃止に対する裁判が提訴されていたが、ここにきて、2013年8月からの基準生活費引下げに対する、制度発足後最大規模の集団訴訟が提訴されている。

 これら保護基準を問う裁判は、朝日訴訟と異なり、基準の引下げに対して異議を唱えるものである。2013年8月からの基準生活費の引下げについては、生活保護バッシングのなかで、20000件近い審査請求が提起され、500人を優に超える原告が裁判に立ち上がっており、生活保護争訟の歴史上異例の事態となっている。

 市民生活の下支えである生活保護で保障される生活が、果たして健康で文化的な生活なのかどうか、今まさに、全国民的規模で鋭く問われているといえよう。

Ⅲ 【資料】主な生活保護裁判一覧(○原告の請求認容、△一部認容、×棄却、却下)
(注)2014年12月末現在。それぞれの判決、決定は、判例集、最高裁判所判例検索、「賃金と社会保障」誌各号等を参照されたい。

番号 条文 裁判名・争点 判決 内容
1条 ゴドウィン訴訟 非定住外国人と生活保護 ×神戸地裁H7.6.19
×大阪高裁H8.7.12
×最高裁H9.6.13
外国人留学生の医療費について、生活保護の適用を否認
1条 宋訴訟 不正規滞在外国人と生活保護 ×東京地裁H8.5.29
×東京高裁H9.4.24
×最高裁H13.9.25
交通事故に遭ったオーバーステイ外国人への生活保護の適用を否認
1条
64条
外国人の審査請求適格 ○大分地栽H22.9.30(確定) 外国人に対する申請却下決定の処分性を認め審査請求適格を認めた。
1条 永住外国人と生活保護 ×大分地裁H22.10.18
○福岡高裁H23.11.15
×最高裁H26.7.18
永住外国人(特別永住者)に関する生活保護について、法律上の権利を認めず、行政措置としての現行運用を追認
1条 元暴力団員と生活保護 ○宮崎地裁H23.10.3
×福岡高裁H24.4.27
×最高裁H24.12.20
警察情報による暴力団員認定を認め、急迫保護に限った生活保護適用を容認
3条
8条
朝日訴訟 入院患者日用品費 ○東京地裁S35.10.19
×東京高裁S38.11.4
×最高裁S42.5.24
生活保護基準の設定には厚生大臣に広範な裁量があり、入院患者日用品費(月600円)は、憲法や生活保護法に違反するとはいえない(裁判は原告死去により終結)。
3条
8条
9条
生存権裁判 老齢加算の減額廃止 ×最高裁H12.2.28
(東京地裁提訴分)
老齢加算の減額・廃止処分は、「厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められる場合」等に違法となるが本件では認められない。
3条
8条
基準生活費の引下げ H26.2.25佐賀地裁をはじめ25地裁で800人を超える原告が提訴(H25.11現在) H25年8月からの基準生活費の3回にわたる最大10%の引下げに対して、処分の取消を求めて提訴
4条 増永訴訟 自動車の借用 ○福岡地裁H10.5.26(確定) 自動車借用による保護廃止処分について、保護廃止処分は重すぎるとして取り消す。
10 4条 峰川訴訟 身体障害者の自動車保有 ○福岡地裁H21.5.29(確定) 身体障害者の通院のための自動車保有を認めた。
11 4条 身体障害者の自動車保有 ○大阪地裁H25.4.19(確定) 身体障害者の通院のための自動車保有を認めるとともに、通院以外の日常生活のために使用することも認めた。
12 4条 中嶋学資保険訴訟 保護費の使途自由 ×福岡地裁H7.3.14
○福岡高裁H10.10.9
○最高裁H16.3.16
保護費や認定された収入を原資とする学資保険の保有を容認
13 4条 年金担保、急迫保護 ○那覇地裁H23.8.17 やむを得ない理由による年金担保貸付であったこと、また原告が「生存するために最低限必要な食事や住居すら確保できなくなる危険のある極めて切迫したものであった」として急迫保護を認めた。
14 4条 年金担保、急迫保護 ○大津地裁H24.12.18
○大阪高裁H25.6.11(確定)
継続的な降圧剤の服用は、生命・身体の維持に必要不可欠であり、明渡請求やライフラインの供給停止の可能性はあったとして急迫保護を認めた。
15 4条
30条
林訴訟 ホームレスと生活保護、稼働能力 ○名古屋地裁H8.10.30
×名古屋高裁H9.8.8
×最高裁H13.2.13
ホームレスに対して1日だけの医療扶助しか支給しなかった処分について、稼働能力不活用を理由に容認
16 4条 稼働能力 ○東京地裁H23.11.8
○東京高裁H24.7.18(確定)
稼働意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることができない限り、稼働能力活用要件を充足するとして保護申請却下処分を取消す。
17 4条 稼働能力 ○大津地裁H24.3.6(確定) 有効求人倍率(0.35)や要保護性(手持金835円)から保護申請却下処分を取消す。
18 4条 稼働能力 ○H23.6.21那覇地裁提訴後、H25.9.30処分庁が自ら保護停止処分を取消し原告は裁判を取下げ和解。 裁判所は本件は「週5日以上、1日4時間以上の就労に就くこと」という、原告の努力ではどうにもならない内容の指導指示に従わないから生活保護を停止したというものであって、生活保護法27条に反するという心証を開示していた。
19 4条 稼働能力 ○大阪地裁H25.10.31日(確定) 申請者が求人側に対して申し込みをすれば原則として就労する場を得ることができるような状況であったか否かを基準として判断すべきとして能力不活用ではなかったと認定
20 4条 稼働能力 ○静岡地裁H26.10.2(控訴 糖尿病と腰痛を抱える64歳の男性に対すする「2009年1月30日までに就労を開始し、就労届出書を提出すること」という指導指示違反による保護廃止処分取消す。
21 4条
27条
増収指導、自動車保有 ○京都地裁H23.11.30
×大阪高裁H24.11.19
△最高裁H26.10.23(破棄差戻)
27条による指導指示の内容は「当該書面自体において指導又は指示の内容として記載されていなければなら」ないとして、本件指示内容は、増収のみと解され、自動車の処分は含まれないとして破棄差戻し。
22 4条 生活保護受給者の婚姻費用分担義務 ×大阪高裁H25.4.5決定
×最高裁H25.7.3決定
婚姻費用支払義務は生活保持義務であって、抗告人はこれを免れることはできない。婚姻費用を分担して最低生活が成り立たなければ、生活保護受給額が変更される可能性があるとして抗告を認めなかった。
23 7条 保護申請 ○大阪地裁H13.3.29
×大阪高裁H13.10.29
×最高裁H14.6.13
保護申請は、口頭でも認められるが、表示行為を必要とするとした。
24 7条 保護申請 ○福岡地裁H23.3.29(確定) 福祉事務所は、助言・教示義務、申請意思確認義務、申請援助義務が存するとし、遺族の慰謝料請求を認容
25 7条 保護申請 ○さいたま地裁H25.2.20(確定) 福祉事務所が1年以上申請を認めず、保護開始決定後もわずか3か月で,原告らを転居させて保護を打ち切った事案で申請権侵害等を認めた。
26 7条 保護申請 【再掲】○大阪地裁H25.10.31(確定) 福祉事務所は、必要に応じて相談者に対し適切な質問を行うことによって、保護の必要性、申請意思を把握し、保護の開始申請手続きを援助する職務上の義務を認定
27 7条
15条
教示義務、医療移送費 ○神戸地裁H25.3.22 「被保護者から、特定の扶助を受けられるかどうかについて教示を求められた実施機関の職員が、当該扶助を行う可能性があることを認識すべきであったにもかかわらず、漫然と、当該扶助を行う可能性がないことを明示又は黙示に示した場合には、被保護者に認められた保護変更の申請権を侵害する」
28 8条
9条
高訴訟 他人介護料特別基準、心身障害者扶養共済年金の収入認定 ○金沢地裁H11.6.11
○名古屋高裁H12.9.11
○最高裁H15.7.17
24時間介護を要する重度障害者に対する他人介護料特別基準額の低さは認めなかったが、心身障害者扶養共済年金の収入認定については取り消す。
29 8条 みなし収入認定 ○大分地裁H26.1.27(確定) 自動車の保有を理由に、実際の収入より高い最低賃金額を約9年間にわたり収入認定していた取扱を違法と認め、実収入との差額分等の請求を認容。
30 9条
12条
岩田訴訟 他人介護料の特別基準 △東京地裁H8.7.31
△東京高裁H9.5.29
△最高裁H10.4.30
介護者が事故に遭って介護できなかった期間の家政婦による介護料について特別基準の設定を求めた。一部認容。
31 10条 第1次藤木訴訟 世帯認定 ○東京地裁S47.12.25(確定) 妻と、夫および夫と同棲中の女性とを同一世帯と認定するという公序良俗に反する世帯認定によって、別居して入院中の妻の保護申請を却下した処分の取り消す。
32 12条 障害者加算漏れ ○〔実質勝訴〕大阪地裁H14.12.24提訴 提訴後、福祉事務所が1年分の加算を遡及支払したため取り下げ。
33 14条 敷金支給事由 ○広島高裁H22.12.27(上告不明) 家主の立退き請求の理由が被保護者にあったとしても敷金支給理由に該当するとして敷金不支給処分を取消す。
34 14条 住宅扶助限度額を超える転居先家賃の場合の敷金支給 ○福岡地裁H26.3.11(確定) 特別基準額を超える家賃の場合に一切敷金等として必要な額の認定をしてはならないという趣旨のものでないとして不支給決定を取消す。
35 26条 柳園訴訟 保護廃止 ○京都地裁H5.10.25(確定) 知人宅に身を寄せて治療していた保護利用者に対する「傷病治癒」を理由とする保護廃止処分を違法と認定(国賠請求)
36 26条
30条
退院即廃止 ○京都地裁H17.4.28(確定) 退院即保護廃止となった保護利用者が死亡した事案について、廃止の違法性を認め、遺族の慰謝料請求を認容
37 26条 石崎訴訟 保護辞退届 ×広島地裁H7.3.23
○広島高裁H8.9.27(確定)
任意の意思に基づかない保護辞退届を無効と認定
38 27条
62条
村田訴訟 保護廃止手続 ○福岡地裁H19.11.15(確定) 指導指示違反によって直ちに行われた保護廃止処分を取消す。
39 27条
62条
保護停止手続 ○神戸地裁H23.9.16(確定) 書面による指示がないままに保護停止した処分を手続き違反により取消す。
40 27条
62条
保護停止手続と廃止の相当性 ○福岡地裁H21.3.17
△福岡高裁H22.5.26
△最高裁H23.3.11
一審は書面による指示がなく、弁明手続きなしの保護停止処分を取消したが、控訴審は期限徒過によりこれを認めず、廃止の違法性を認めた。
41 30条 佐藤訴訟 ホームレスの居宅保護 ○大阪地裁H14.3.22
○大阪高裁H15.10.23(確定)
難聴のホームレスである原告に対する施設入所決定を取り消し、居宅保護を認めた。
42 63条 障害年金の遡及受給と自立控除 ×神戸地裁H24.10.18
○大阪高裁H25.12.13(確定)
福祉事務所の違法な対応により保護申請が遅れたためにやむを得ず行った借金の返済について63条の自立控除を認めた。
43 63条 エアコンと自立控除 ○福岡地裁H26.2.28(確定) エアコンを購入する費用は、原告の自立更生のためにやむを得ないものであるとして、63条決定を取消す。
44 63条 福祉事務所のミスによる過払い 【再掲】○福岡地裁H26.3.11(確定) 「全額返還を命じることにより自立を著しく阻害するような場合には、保護の実施機関が、自立更生費の有無にかかわらず、一定額を過誤払金から控除して決定することも可能」として63条決定を取消す。
45 78条 不正受給の「故意」 ○高松地裁H21.3.23
×高松高裁H21.11.30
×最高裁H22.3.23
こども保険[民間保険]の育英年金の収入申告をしなかったことについて一審は故意を認めず、当該保険金は63条に該当するとしたが、控訴審、上告審は認めず。
46 78条 「不実の申請」と「不正の意図」 ○H26.5.26千葉地裁提訴後、処分庁が自庁取消 「本件では、不正受給の意図が見受けられず、また実際に転居を実行していることから、同条に定める要件を欠くため、本件処分を取消すことといたします」として自庁取消
47 保護開始の仮の義務付け ○那覇地裁H21.12.22決定
○福岡高裁H22.3.19決定(確定)
申請時において、必要な生活費、家賃及び医療費等に著しく不足する困窮状態にあり、生活保護費が支給されなければ、申立人が健康で文化的な最低限度の生活水準を維持することができないという損害を被るおそれがあったとして、保護開始の仮の義務付けを認めた。
48 保護廃止の執行停止 ○那覇地裁H20.6.25決定 「要保護者の最低限度の生活を保障するという生活保護制度の趣旨及び申立人の生命・健康という権利の性質などから」執行停止を認めた。
49 保護廃止の執行停止 ○宮崎地裁H23.10.3決定 保護廃止による生命の危険性を認め、その執行停止を認容
50 保護廃止の執行停止 ○松山地裁H26.7.11決定 歩行障害により歩けない申立人への保護廃止処分について「申立人の最低限度の生活を脅かすもの」として執行停止
51 保護停止の執行停止 ○さいたま地裁H26.7.14決定 通院のために自宅を買換えて引越した申立人への保護停止処分について「最低限度の生活を維持することが直ちに困難になることは明らか」として執行停止
52 ケース記録の証拠保全 ○さいたま地裁H19.5.9決定 訴訟提起に先立ち、ケース記録の証拠保全手続きを認めた。
53 ケース記録の証拠保全 ○福岡高裁H20.5.19決定
○最高裁H20.12.18決定
証拠保全手続においてケース記録が全面開示されなかったことからそれを争い全面開示が認められ、最高裁も支持。
54 ケース記録の開示 ○東京地裁H19.7.4(確定) 個人情報保護条例に基づく生活保護ケース記録開示請求ついて、記録は生活実態に関する客観的、具体的事実が中心であり、担当者の専門的な知見に基づく評価が記載されており、開示されても業務に支障は生じないとして、一部非開示決定を取消す。
55 米子生健会事件 当事者団体の団体交渉権 ×鳥取地裁S47.8.29 生活と健康を守る会と行政との団体交渉権を認める(但し有罪)。
56 第2次藤木訴訟 裁判費用と生活保護 ×東京地裁S54.4.11
×東京高裁S62.7.19
×最高裁S63.4.19
第1次藤木訴訟(№31)の裁判費用を生活保護費から支給すべきであるとして提訴。一審では認められずその後原告が亡くなり、控訴審、上告審とも承継を認めず。
57 審査請求期間50日徒過の違法性 ○秋田地裁H22.2.26(確定) 審査請求から訴訟提起に至るまで150日近く審査庁が裁決をしなかったことに対して、不作為の違法確認の訴えが提起された事案で、特段の事情ない限り違法であると判断。